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1995年7月17日 月曜日

[]ひとりで歩く ひとりで歩く - センチメンタル☆ユニバース を含むブックマーク

河上あや 小学6年生 1995-07-17 16:45

お寺の裏の細い道をひとりで歩いた。生け垣の向こうにひまわりが咲いている。わたしのワンピースと同じ色。あとちょっと時間が経って、夕方になって赤く染まると、少しオレンジがかって見えるところもきっと同じなんだろう。

日焼けした肌が痛んだ。髪の毛や体から、プールのにおいがした。


[]一緒に歩く 一緒に歩く - センチメンタル☆ユニバース を含むブックマーク

河上あや 小学6年生 1995-07-17 16:40

帰り道、わたしの名前を呼ばれた。すぐわかった。松野の声だった。声に反応して体中が熱くなった。松野のことばかり考えているから、罰が当たったと思った。

「あのさあ、河上さあ、次の水泳の時間、リレーがあるじゃん。アンカーになっちゃったから50メートルなんだよ。うまいターンのしかた、教えてくんない?」

それだけでもすごくうれしかった。よくわたしに聞いてくれたと思った。同じ学年の他の男子に聞かず、わたしに聞いてくれる松野。男子とか女子とか、あまり気にしない松野

松野と話しながら、少し歩いた。ターンのしかたについて話し終わると、あとはしばらくふたりとも黙ってしまった。わたしは中学受験のことが聞きたかったけど、どうやって切り出したらいいかわからなかった。わたしが松野を好きな気持ち、そのニュアンスまで松野はわかってくれるだろうか。いろいろ考えているうちに、松野の家の前に着いた。

「じゃあな。サンキュー河上


[]病院へ向かう 病院へ向かう - センチメンタル☆ユニバース を含むブックマーク

茂木蓉子 小学6年生 1995-07-17 15:35

今日は検査をしに病院に行く日なので、あやちゃんと帰れなくて残念。学校の近くまでお母さんに車で迎えに来てもらって、そのまま病院に向かうのです。

車に乗っているあいだじゅう、お母さんはお兄ちゃんの彼女の悪口を言い続けていました。お母さんにとって、お兄ちゃんの彼女はお兄ちゃんを奪い取る敵のようです。私は嫌いじゃありません。いろんなことを知っているし、洋楽について教えてくれるからです。


[]思い浮かべる 思い浮かべる - センチメンタル☆ユニバース を含むブックマーク

河上あや 小学6年生 1995-07-17 15:30

ヨーコちゃんとは、校門で別れた。ヨーコちゃんは、お母さんと国道で待ち合わせをしているので、病院の日は方向が逆になるから一緒に帰れない。そういえばヨーコちゃんはわたしに水着を買い換えれば? って言ってたっけ。小さくなった水着。スイミングでは競泳用のを着ているけど、学校ではみんなと同じ水着。4年生の時から着ている水着。恥ずかしいけど、この夏で最後の水着。

プールの最中は、ずっと松野を見てた。もしかしたら気付かれちゃうんじゃないかと心配したけど、全然そんなことなかった。松野、泳ぐことに熱中していて、他のどんなことも見えていないみたいだった。

わたしは、泳ぐのが好き。どこに行くにも泳いで行けたらいいのにと思う。地球温暖化で海水面が上昇して、クロールで登下校することを思い浮かべる。

自分の手が水をつかんで、脚が水をつかんで進むこと。うまく説明できないけど、そのおこないに、すばらしい充実感がある。それだけなんだけど、それはすごいことなんだ。

小さいころからスイミングスクールに通っていたわたしは、辛いことも嫌なことも全部、泳いで吹き飛ばしていた。スイミングに通うこと自体とか、コーチとか他の生徒も嫌で嫌で仕方なかったけど、それすらも泳ぐことで忘れることができた。ぜんぶ忘れてしまえば、毎日元気でいられる。

松野も忘れたいことがあるんだろうか。噂では、私立の中学を受験するらしいけど。


[]憤慨する 憤慨する - センチメンタル☆ユニバース を含むブックマーク

茂木蓉子 小学6年生 1995-07-17 11:05

「おい茂木、見学の理由はセーリだろ」

「こないだも見学だったよな。こいつ毎日セーリなんじゃねえの?」

本当に、この人たちは無知で粗野で、どうしようもないと思います。たぶん一生、何も考えないまま過ごすんだろうと思います。男子の全員がそうじゃないけれど。

たとえば松野くん。あやちゃんはきっと、松野くんが他の男子とちょっと違うところを好きなんだろうと思います。松野くんはあやちゃんをどう思っているんだろう。松野くんを目で探すと、泳ぎ終わって端から上がるところでした。松野くんの水泳帽から肩から腕から勢いよく水が流れ落ちていきました。熱くなっているプールサイドのコンクリートに、次々と黒い染みができ、それぞれが広がっていきました。しばらく見ていると、松野くんは誰とも口をきかず、黙々と泳いでいます。あやちゃんに対して悪い気がしたので、松野くんの観察はそこでやめました。


[]見学する 見学する - センチメンタル☆ユニバース を含むブックマーク

茂木蓉子 小学6年生 1995-07-17 10:45

水泳の授業を見学しているのは、私ひとりでした。日陰にずっと座っていても、みんなが泳いでいる姿を見ていると飽きません。たまに水しぶきも飛んでくるし、第一、疲れないのがいい。

校舎のほうから、たまに大きな声が聞こえる。あれは宮尾先生の猫みたいな声だ。名字の「宮尾」と猫の鳴き声「みゃお」が似ているなと、そのとき初めて気がつきました。

あやちゃんが私の前を通るときに、濡れた手で私の顔に触れました。冷たくて心地よかった。あやちゃんは私と違い、とても元気な子です。マジックで「河上」と縫いつけられている水着も、きゅうくつそう。

「もう6年生だから、買い換えるのももったいないよ」

あやちゃんは、そう言って笑いました。

明るい場所をずっと眺めていると、目が変になる。すぐ後ろでセミが鳴き始めたので、視線を戻したら、真っ暗で、しばらく何も見えませんでした。ようやく慣れたころに、実は私が木漏れ日の中にいることがわかりました。葉っぱのすき間からのぞく、たくさんの小さな光は、全部お日さまのかたちをしていました。


[]くりかえす くりかえす - センチメンタル☆ユニバース を含むブックマーク

松野敬久 小学6年生 1995-07-17 10:40

体育は水泳だった。クロールで25メートル泳いで、プールサイドを歩いて戻る。順番を待って、また泳ぐ。繰り返し繰り返し。全身がだるくなってくるけど、悪い気分じゃない。

飛び込み台に立つと、校舎のほうから大勢の笑い声が聞こえた。きっと低学年の教室だろうと、なんとなく思い浮かべた。


[]汗をかく 汗をかく - センチメンタル☆ユニバース を含むブックマーク

松野敬久 小学6年生 1995-07-17 08:05

教室に入ると、窓際の席で河上茂木が向かい合って、1冊の雑誌を一緒に見ていた。俺を見て河上

「あー、松野だ」

と言った。名前を呼ばれたが、だからといって何か用事があるわけではないらしい。

茂木は座ったまま、こっちを向いて微笑んだように見えた。茂木はあまりしゃべらないのでよく知らない。

ふたりは再び雑誌に目を落とした。

ランドセルを下ろすと、汗で背中がぐっしょり濡れているのがわかった。

まだ男子は誰も来ていないようなので、どこか風通しのいいところで背中を乾かそうと思った。そのうち公ちゃんとかブーヤンが来るだろう。

朝から暑かった。

comnnocomcomnnocom2006/06/19 21:35いちおう、こっちからのトラックバックは見出しごとに送れますよ。
うちのコメントに書いてくれたのは、こういう意味じゃなかったですか?

extrameganeextramegane2006/06/20 02:46受け取るほうが日付ごとになっちゃうてことすかね?

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